自分らしく個性的でいることを押しつける現代の消費社会。




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最終更新日 2022年8月1日

「個性」は現代社会で生きていれば頻繁に耳にする言葉だ。

人生に悩んだり仕事選びで迷ったり、人間関係で疲弊している人たちに対して「自分らしく生よう」と語りかける人は多い。

しかし、「自分らしさ」とは何か、「個性」とは何かについてハッキリと答えられる人は多くないだろう。

大体の人はふんわりとしたニュアンスで個性やら自分らしさといった言葉を使っている。

自分が好きなものを個性だと言う人もいれば、着飾ったり無理していない自分を自分らしさと言う人もいる。

でも、個性や自分らしさは本当にそんなに大切なのだろうか?

 

自分らしさがわからない人たち

なんだか今の世の中は、あたかも「個性的でいなければならない」「自分らしくいなければならない」と思い込んでいる人が多い気がする。

近年よく聞く「多様性」という言葉も、簡単に言えば「自分の個性を大事にしなさい」というメッセージが含意されている。

自分は自分らしくあれ、というわけだ。

だがさきほども言ったように、大多数の人は個性や自分らしさが何なのかを理解していない。

常に探してはいるのだけれど、自分は何が好きなのか、何が得意なのか、何がやりたいのか、何がしたいのかを明確に答えられる人は少ない。

とりあえずやってはみたものの「何か違う」と感じてすぐやめてしまい、別の何かにチャレンジしては「これも違う」と感じ、再び自分らしさを求めて右往左往する。

こうした状態になっている若者も多いのではないだろうか。

 

個性や自分らしさを消費する

実際、個性や自分らしさに定義は存在しない。

そんなもの誰にもわからないのだ。

でも現代では「個性を大事にしろ」「自分らしく生きろ」と社会全体が圧力をかけてくる。

だから、若者や自分らしさがわからない大人は悩んだり迷ったりしてしまう。

そこに現代の「消費社会」が襲ってくる。

今の世の中は紛れもなく消費社会である。

汗水垂らして働いたお金を、私たちは好きなものを買ったり旅行に行ったり趣味に費やし、お金を消費することで充実感を買っている。

働いて稼いだお金を楽しいことや好きなことに使う。

たしかに充実した人生だ。これはこれで幸せだろう。

しかし、消費社会は個性や自分らしさがわからない人たちに対して、個性や自分らしさを与える社会であることを忘れちゃならない。

つまり、私たちはお金だけじゃなく、個性や自分らしさも消費しているのだ。



個性の商品化

現代社会が個性的でいることや自分らしく生きることを押しつけるほど、多くの人は「個性的に生きなければ」「自分らしく生きなければ」と感じてしまう。

他人や周りに同調するのではなく、自分が本当にやりたいことや好きなことをやれ、と社会が圧力をかけてくる。

そうすると、ふわふわ生きている人でも焦燥感を感じ、自分探しの旅に出る。

そこへ消費社会が「あなたの個性はこれですよ」「自分らしさはここにありますよ」と語りかけてくる。

Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズは「消費者は自分が欲しいものを知らない。それは目の前に出されて、はじめて欲しかったと気づくのだ」と述べた。

これは商品に限った話ではなく、個性や自分らしさにも言えることだ。

つまり現代は、個性的でいなければならない、自分らしく生きなければならないと感じている人に対して、個性や自分らしさをパッケージ化して売りつけているのだ。

個性や自分らしさは商品化できると気づいた大人たちは、ありとあらゆるものを「あなたの個性を発揮できますよ」というメッセージと共に現代人に売りつける。

それを手にした人たちは、探し求めていた個性や自分らしさを手にした気持ちになるだろう。

他人と被らない服装、奇抜な髪型と髪色、個性的なアクセサリー、旅行が大好きな自分、音楽が生きがいの自分、趣味に生きる自分、どれもこれもパッケージ化された個性である。

現代人は知らないうちに、それらがあたかも自分の個性であるかのように思い込んでいる。

 

みんな違くてみんな同じ

もちろん、世の中には本当の意味で自分らしく生きている人もいるだろうし、自分の個性が何なのかを理解して生きている人もいる。

消費社会が売りつける個性や自分らしさではなく、本当の自分を大事にしながら生きている人も少なからずいる。

でも大多数の人はそうじゃない。社会が売りつける個性を自分の個性と勘違いして生きている。

だからこそ、好きなことをしているはずなのにどこか満たされない気持ちになったり、やりたいことをやってるのにつまらなさを感じたりする人が多いのだろう。

個性を大事にして生きるのは大切なことだ。自分らしい人生を生きることも大切だ。

しかし、個性や自分らしさを探し求めるあまり、消費社会が提供する個性や自分らしさに飛びついちゃいけない。

それらはあなたの本当の個性ではない。頭の良い人たちのマーケティングによって個性だと思わされているだけだ。

正直、人間に個性や自分らしさなんていらないと思ってる。

そもそも、その言葉を使っている大人たちがその意味を理解していないし、彼らこそ消費社会に与えられた個性を自分の個性だと思っているのだから救いようがない。

個性や自分らしさという言葉の魔力に惑わされると、消費社会の中で永遠に「好きなことをやってるのにつまらない」という退屈を感じながら生きることになる。

人間は一人ひとり違うが、そこに決定的な差異があるわけではない。

みんな違くて、みんな同じなのだ。

必要以上に個性や自分らしさを求める必要はない。

他人と違うことを望む気持ちが、結局のところ他人と同じなのだ。

個性的でいようと望むあまり、個性を見失うことのないように個性的に生きよう。

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