「仕事」と「労働」の違いを理解し、より充実した働き方を手に入れる方法。

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最終更新日 2024年12月11日

一般的には「仕事」と「労働」は同じものだと思われがちですが、実はこの2つは言葉以上の違いがあります。

英語でも仕事は「work」なのに対して、労働は「labor」となっていて、laborというのはラテン語の「laboro」に由来し、これは骨を折る作業、苦労するといった意味の言葉です。

現代では仕事と労働が一緒くたにされていて、仕事が労働の意味にすり替えられています。

竜崎
だからこそ、現代では仕事がつらく苦しいものだというイメージが大人たちに行き渡っています。

今回の記事では、仕事と労働の違いについて解説していき、後半では労働を「仕事」にする方法を紹介していきます。

現代では「働きたくない」と思っている人がたくさんいますが、それは「仕事」ではなく「労働」をしているからかもしれません。

 

仕事と労働の違い

ドイツの哲学者であるハンナ・アーレントは、「人間の条件」という本の中で「仕事」と「労働」を明確に区別しました。

アーレントによれば、仕事と労働は以下のように分けられると言います。

仕事と労働

アーレントの定義では、仕事とは「人間の個々の生命とは別個に、世界に存在し続けていくモノの創造に関わる営み」であり、労働とは「人間の肉体によって消費される、必要物の生産に関わる営み」のこと。

とてもわかりづらいですが、簡単に言うと、仕事は「消費以外の価値を生み出すものをつくる活動」、労働は「生活や消費のために仕方なくおこなわれる生産活動」ということです。

 

仕事は高貴な活動で労働は奴隷がするもの

現代からさかのぼることはるか昔の時代、プラトンやアリストテレスたち古代ギリシャでは、労働は奴隷たちがするもので、貴族のような地位の高い人たちからは敬遠されていました。

奴隷を雇うお金を持っていた人たちは、生活に必要な労働を奴隷に任せ、自分たちは芸術的作品を作ったり、哲学に勤しんだり、創造的な活動である仕事をしていました。

昔の時代では、労働は忌避するべきものとして扱われていましたが、仕事は高貴な活動だと考えられていたのです。

仕事は高貴な活動

それから中世になると、ドイツの神学者であるマルティン・ルターによって労働が賛美されるものになりました。

ルターは宗教改革をおこない、労働が神への奉仕の行為であり、自分の職業に献身することが神に仕える最高の方法だと述べたのです。

竜崎
ここからプロテスタントの思想が生まれることになります。

フランスの神学者であるジャン・カルヴァンはルターの労働の考えをさらに進め、労働によって金銭を手に入れることは神への信仰の証であり、どんな地位にある人でも労働をすべきだと述べました。

現代では神への信仰として労働をしたりお金を稼いだりはしていませんが、「働かざる者、食うべからず」という言葉がよく使われているように、労働は生きるためにしなければならないものと思われています。

 

仕事と労働の具体例

さきほど紹介したように、ドイツの哲学者であるアーレントによれば、仕事と労働の違いは以下のように分けられます。

仕事と労働

この定義から考える「労働」の代表的なものは、食料品や衣服の生産などがそれに当たります。

食料や衣服は人間が消費するために必要であり、人間の生活には欠かせない必需品です。

「生活のために仕方なくやる仕事」、それがアーレントのいう「労働」です。

アーレントの「労働」

一方、アーレントが言う「仕事」とは、音楽や絵、詩や工芸品といった、必ずしも生きるために必要ではないものをつくる活動です。

たとえば音楽や小説など、モノづくりなどの芸術的活動全般が仕事に当てはまります。

「生きるための消費ではなく、純粋な創造と楽しみによる行為」、それがアーレントのいう「仕事」です。

アーレントの「仕事」

ですが、アーレントの仕事と労働の違いは、令和である現代にそのまま適用することはできません。

というのも、アーレントの仕事と労働の区別は、一昔前の「フォーディズム的生産体制」のときにこそ意味があったものだからです。

 

現代は「労働」から解放されつつある

フォーディズム的生産体制とは、フレデリック・テイラーの「科学的管理法」を元にした、大量生産のために導入した作業方式のことです。

簡単に言うと、8時間労働と誰でもできる単純な繰り返し作業のことを指します。

フォーディズム的生産体制

産業革命後の世界では、とにかく生きるためには働く必要がありました。

フォーディズム時代において、アーレントの言う「仕事」ができる人は一握りの上流階級の人だけです。

それ以外のほとんどの人たちは「労働」をしてお金を稼いでいました。

竜崎
ですが、現代は「生活のための労働」から解放されつつあります。

昔の時代背景の中では、「仕事」と「労働」を区別し「人間らしく生きるためには労働ではなく仕事をするべきだ」という主張が深い意味を持ちました。

しかし、現代ではすでにアーレントが言う「労働」は消えつつあり、自分に合った職業(仕事)をする自由が全員に与えられています。

もちろん世界的に見ればまだまだモノが足りない国や社会もありますし、日本でも生活のための仕事が完全になくなったわけではありません。

それでも現代は昔に比べてモノに溢れ、日本を含んだ先進国では食料や衣服は有り余っています。

現代では、一人ひとりに「労働」ではなく「仕事」をする選択肢が与えられているのです。

 

変化する現代の「仕事」

現代は「生活のための労働」から解放され、「創造的な仕事」をする選択肢が1人ひとりに与えられています。

たとえば衣服や料理を作っている人は、どちらも昔は労働の一部だと考えられていたはずです。

しかし、現代では衣服や料理を作ることは「消費」ではなく「創造」に変わりました。

変化する現代の仕事

衣服をデザインする人も、美味しい料理を作る人も、生きるために仕方なくやっている「労働」ではなく、人々の人生を豊かにする「仕事」をしているのです。

イスを消費するために作るのは「労働」ですが、職人がイスの素材から細部までこだわりを持ち、誰にも作れない芸術的なイスを作るのは「仕事」になります。

竜崎
美術品や工芸品など、何かしらのモノを作ることは現代では「創造する仕事」です。

ほかにも、現代で言えばサイトやブログを作ること、ゲームやアプリを作ることも「労働」ではなく「仕事」です。

時代が変われば仕事も変化していきますが、現代においては労働と仕事を区別するのは難しくなっています。

 

労働ではなく「仕事」をする方法

現代では労働から解放されつつありますが、それでもまだまだ労働をしている人はたくさんいます。

働いていて嫌気が差している人は、「仕事」ではなく「労働」をしている可能性が高いです。

竜崎
ですが、より充実して働きたいのであれば、労働ではなく仕事をしなければなりません。

労働ではなく仕事をするポイントは、以下の3つ。

労働を仕事にするポイント
  • 好きな仕事をする
  • お金だけを目的にしない
  • やりがいを持つ

 

好きな仕事をする

現代では「好きを仕事に」というフレーズをよく耳にしますが、自分の好きなことをしている人は、自分の仕事を労働だと思っていません。

もちろんそれは本人の心意気や考え方の違いにもより、どんな仕事をしていても「自分は労働をしている」と考える人もいます。

竜崎
ですが、現代は昔よりも格段に自分の仕事に対して意義を感じることができます。
仕事をしている人と労働している人

労働をしているのか、仕事をしているのか、両者の違いは「好きなを仕事をしているかどうか」です。

好きな仕事とやりたくない仕事では、仕事に対する姿勢が異なり、その姿勢によって「仕事」なのか「労働」なのかの違いが生まれます。

たとえ単純作業をやっていたとしても、その作業が自分の好きな仕事なら労働だとは感じないでしょう。

 

お金だけを目的にしない

仕事なのか労働なのかは、働いている目的によっても判断できます。

たとえば、働いている目的がお金になっている人は、仕事ではなく労働をしている状態です。

竜崎
なぜなら、お金を稼ぐために働くというのは「生活のための活動」だからです。
労働活動

多くの人たちの認識では、「仕事はお金を稼ぐため、生活費を稼ぐためにするもの」という考えが一般的です。

お金さえあれば仕事なんてせず、毎日遊んで暮らしたい、そう思っている人も多いでしょう。

だからこそ、現代では仕事に対して嫌悪感を感じている人が多く、できれば働きたくないと思っている人が多くなっています。

竜崎
ですが、仕事に対して嫌気が差すのは「仕事」ではなく「労働」をしていることが原因です。

つまり、お金を目的になっているから仕事が労働になり、労働になるから仕事がつまらなくなって働きたくないと感じるということ。

仕事に嫌気が差す原因

もちろん、お金がなければ現代ではマトモな生活が送れないので、仕事をしてお金を稼ぐことも大切です。

大事なのは「お金だけを目的にしていないか」であり、お金以上に強い働く目的があれば労働ではなく仕事になります。

仕事を労働にしないためには、仕事内容や人間関係、社会的意義といったお金以外の部分を重視しなければなりません。

 

やりがいを持つ

アーレントは労働と仕事を明確に分けましたが、現代は仕事と労働を自由に行き来できる時代です。

極端な話、自分が労働だと思えば「労働」であり、仕事をしていると思えばそれは「仕事」になります。

そのためには、自分の中での「仕事」の定義をハッキリさせなければなりません。

他人にとって単純作業が「労働」だとしても、自分にとっては「仕事」になるかもしれない。

自分にとって「労働」だと感じることが、他人にとっては「仕事」になるかもしれない。

自分はどういう仕事(作業)に楽しさを感じるのか、どんな仕事(作業)が嫌なのか、お金以外にどんな目的を持って働きたいのか。

こうした部分がハッキリしていないと、いつまで経ってもお金のためだけに働き、毎日働きたくないと言いながら惰性で仕事することになります。

もちろん、どんな仕事にも嫌なことや大変なことはたくさんありますが、「仕事」だからこそ頑張れるのも事実です。

竜崎
仕事と労働のもっとも大きな違いは、やりがいを持っているかどうか。
やりがいのある仕事

やりがいがあるということは、お金以外にもその仕事に真剣になる理由があるものです。

そのやりがいこそ、自分の中での労働と仕事を分ける最大のポイントとなります。

仕事をやりがいについては、以下の記事で詳しく解説しているので、興味がある人は読んでみてください。

【仕事のやりがいvsお金】後悔しない選び方と長期的な幸福度。

2024年12月10日

 

【まとめ】労働ではなく仕事をしよう

今回の記事のまとめは、以下のとおり。

今回の記事でわかったこと
  • 仕事は、消費以外の価値を生み出すものをつくる活動のこと。
  • 労働は、生活や消費のために仕方なくおこなわれる生産活動のこと。
  • 現代は「労働」ではなく「仕事」をする自由が1人ひとりに与えられている。
  • 仕事か労働かは「好きな仕事をしているか」「働く目的がお金以外か」「やりがいがあるか」で変わる。
  • 仕事に一生懸命取り組むことができれば、それは労働ではなく仕事になる

仕事と労働は普段同じような意味として使われますが、両者には明確な違いがあります。

労働は生活のために仕方なくやるもの、仕事は楽しさや喜びのためにするものと言っても間違いではありません。

現代では、昔は労働だったものでも仕事に変わっているものがたくさんあります。

竜崎
どんな仕事であっても、自分の好きな仕事(作業)だったり、お金以外に働きたいと思う目的がある場合は、労働ではなく仕事です。

労働ではなく仕事をすることができれば、仕事に抱いている嫌悪感もなくなり、より充実した気持ちで働けることができるでしょう。

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