最終更新日 2024年12月19日
人は誰でも自分のことを否定するのが苦手です。
他人の間違った行動には敏感に反応しますが、自分のことになると咄嗟に自分を守る行動をとってしまいます。
- なんとなく間違っていると感じていても、自分が正しいと思い込んでしまう。
- 都合の悪いことは無視し、自分にとって都合のいいことにしか目を向けない。
- 自分を肯定するように物事を捉え、自分の選択や決断が間違っていないと思い込んでしまう。
こうした状態は、心理学的に「自己正当化バイアス」と呼ばれるものです。
自己正当化は度々間違った選択をする原因となり、後悔することも少なくありません。
今回の記事では、自己正当化バイアスとはどういうものなのか、自己正当化しないためにはどうすればいいのかについて解説していきます。
つい自己正当化してしまう人、周りに自己正当化している人がいる人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
自己正当化バイアスとは
自己正当化バイアスは「正常性バイアス」とも呼ばれ、自分にとって都合の悪い情報を無視し、自分を正当化する人間の認識の欠陥のことです。
誰しも少なからず間違うことがあるものですが、自己正当化バイアスに陥ってしまうと無理やり自分を正当化してしまいます。
さらに、自己正当化バイアスに陥っている人は、自分が自己正当化していることにも気づきにくいという欠点があります。
そのため、自己正当化バイアスは人間のバイアスの中でも治しづらく、判断や決断に悪影響を与えているケースが多いです。
自己正当化バイアスは自分を守るためのもの
自己正当化バイアスが治しづらいのは、人は自分を守るために自己正当化する傾向があることによります。
たとえば、仕事で何かしらの大きなミスをしたときのことを考えてみましょう。
どれだけ高学歴で優秀な人であっても、仕事で一度もミスをしたことがない人はいないはずです(自分ではミスだと認識していない場合は除く)。
仕事のミスを自分の責任だと思うことができる人は、次からはミスしない方法を考え、失敗と改善を繰り返して成長していく。
一方、仕事のミスを自分以外の責任、たとえば上司の指示がわかりにくい、周りが協力的ではなかった、時間がなかったのでミスしても仕方ないと思う人は、自己正当化バイアスにハマっていく。
自己正当化バイアスはその名のとおり、自分を正当化することです。
もちろん、本当にミスの原因が自分以外にあったかもしれませんが、自分以外の原因を見つけようとしたり、言い訳したりする時点で、その人は自己正当化バイアスに陥っています。
人間の左脳は言い訳を作り出す天才であり、たとえどんなに自分が悪い状況であったとしても、そこに何かしらの言い訳を作り出し、自己正当化をおこなうのです。
人は自分が一番かわいい生き物なので、脳は自分を守るために必死に自己正当化をおこない、自分への責任を回避しようとします。
つまり、自己正当化バイアスは自分を守るための、人間に備わった心理的な防御機能なのです。
自己正当化バイアスは思い込みと自信過剰をもたらす
自己正当化バイアスは自分を守るためのものですが、それは時に思い込みと自信過剰をもたらします。
仕事でミスをすれば上司や先輩から怒られ、次は同じミスをしないようにと釘を刺され、メンタルが弱い人は次の日まで引きづることも少なくありません。
ですが、その自信が自己正当化バイアスを引き起こすこともあります。
自分に自信を持てば持つほど、根拠のない自信も増していき、できるかどうかわからないことまで「できる」と思い込むようになる。
その結果、過去にうまくできなくてミスをしたことでも、「今回は以前とは違う」と自分を正当化し、同じようなミスを繰り返してしまうのです。
つまり、同じミスを何度もする人は、自己正当化バイアスに陥っている可能性が高いということ。
自己正当化バイアスによって後押しされた自信は、現実の自分の実力を過大評価します。
過度な自信を持った状態で、大事な仕事や人生の選択をするとどうなるか。
自己正当化バイアスが大きな後悔につながるのは、思い込みと自信過剰が強くなりすぎることにあります。
現実と自己正当化した現実のギャップ
自己正当化バイアスは、何も仕事のときだけに顔を出すわけではありません。
家族や友達といった人間関係、とくに恋愛では自己正当化バイアスが頻出します。
恋愛で自己正当化バイアスに陥ってしまうのは、「失恋した後に出会った異性に対する想い」がもっともわかりやすいです。
そうした人は、別れたときこそ「しばらく恋愛はいいや」と言ってはいるものの、数ヶ月もすればコロっと「恋人ができた!」と言ってきたりします。
「浮気されて恋愛はしばらくいいんじゃなかったの?」と聞くと、「今回の人は前の人とは違う!」と言う。
このとき、その友人の中で起こっているのは紛れもなく自己正当化バイアスです。
つまり、友人は心の底から「今回は違う」と思っているのではなく、単に以前の恋人とは違うと思い込みたいだけ。
もっと言うと、「今回の人は前の人とは違いますように」という願望を抱き、自分を正当化しているのです。
自己正当化は自分を無理やり正当化している状態なので、そのときの自分はまさしく幸せな状態です。
ですが、正当化しても正しくなるわけではないため、現実と正当化した現実のギャップはいつか必ず埋まります。
そして、現実と正当化した現実のギャップが埋まるとき、人は自分の選択や決断が間違ったことに気づくのです。
自己正当化バイアスは自分では気づけない
自己正当化バイアスの最大の欠点は、自分では自己正当化していることに気づけないこと。
第三者から見るとそれがただの自己正当化にすぎないのがハッキリとわかっても、本人はその事実を認めようとはしません。
つまり、否定の否定をすることで人は自己正当化をおこない、無意識のうちにバイアスの沼にハマっていくのです。
もちろん、自分を守ることは悪いことではありません。
ですが、人生を大きく左右する判断や決断をするときに、自己正当化バイアスにハマると後悔することが少なくありません。
後から振り返ると「なんであんなことしたんだろう」と思ったとしても、その判断をしたときは自己正当化バイアスにかかり、無理やり自分を正当化しているので気づけない。
後悔のない選択をしたいときや、ありのままの現実を直視するためには、自己正当化バイアスにかからないことが大事です。
自己正当化バイアスはハマると抜け出すのは難しいですが、ハマらなければ問題にはなりません。
バイアスを克服するのではなく、そもそもバイアスにかからない。それが賢い人生の生き方です。
自己正当化バイアスにかからないためのポイント
自己正当化バイアスにかかると、選択や決断を間違えてしまい、大きな後悔をしてしまいます。
さきほど言ったように、バイアスは抜け出すのが難しいので、そもそもバイアスにかからないのが大事です。
そこで、自己正当化バイアスにかからないためのポイントをいくつか紹介していきます。
- 自己否定する
- 他人の意見に耳を傾ける
- 心理学的な知識を学ぶ
自己否定する
自己正当化バイアスにかからないためには、自己否定をしなければなりません。
人は誰しも自分がやっていることに自信を持っていたいし、自分の選択や決断は正解だと思いたい欲求があります。
自分の選択は正解だと自己正当化をおこない、自分で自分を納得させて生きているのが人間です。
自己否定と言っても「自分はダメな奴だ」「自分は存在価値がない」といった否定ではなく、自分の考えや判断を自分で否定して考えることです。
自分の頭に浮かんでいる考えや判断を、自分が反対を意見を持った相手になり、自分で自分の意見を否定する。
他人の目や立場から物事を見れば、辻褄が合わない部分に対して疑問が浮かび、自己正当化されているポイントが見えてきます。
人はみんな不完全な存在であり、何一つ間違わない人間も存在しません。
自己正当化バイアスは自分を守るためのものですが、自分に都合の悪いことを無視していては人間的な成長もなくなってしまいます。
自分が正しいと思い込んで大きな間違いをしないためにも、何事も自己否定を挟んで考えるようにしましょう。
他人の意見に耳を傾ける
よく言われるように、人は自分の欠点は見えませんが、他人の欠点はハッキリと見えます。
他人に対しての批判がそのまま自分自身に当てはまっていたとしても、それに気づかず偉そうに他人を批判する。
ブーメランもある意味、自己正当化バイアスにかかっている状態であり、自分の言うことが正しいと思い込んでいる状態です
こうした状態にならないためには、他人の意見に耳を傾けなければなりません。
さきほど言ったように、人は自分の欠点は見えませんが、他人の欠点はハッキリと見えます。
これはつまり、他人からの批判には一定の真実が含まれているということです。
自分で自分の欠点を調べようとしても、自己正当化バイアスによって自分に都合のいい欠点しか見えてきません。
ですが、他人に自分の欠点を聞くと、自分では気づかなかった欠点を知ることができます。
自己正当化バイアスにかかった状態で他人の意見を聞いても、さらに自己正当化が激しくなるだけです。
自分では正しいのか間違っているのかわからない状態のときに他人の意見を聞くことで、自己正当化バイアスにかからず冷静に判断を下せるようになります。
心理学的な知識を学ぶ
自己正当化バイアスにかからないためにもっとも効果的なのは、心理学的な知識を学ぶことです。
自己正当化バイアスやその他のバイアスにかかってしまうのは、そもそも人間にはどういうバイアスがあるのかを知らない点にあります。
「バイアス」という言葉をはじめて聞いた人もいるでしょうし、人はどういう状態のときに、どういう心理状態になるのかもわかっていません。
ですが、心理学やバイアスなどの知識を学べば「自分は今、自己正当化バイアスに陥っているかもしれない」と気づけます。
まさに「知識は自分を守る武器になる」のです。
人生での大きな失敗や後悔は、感情や思い込み、自信過剰などから生まれます。
自己正当化バイアスも、「なぜ自己正当化してしまうのか」という根本的な心理部分がわかれば、対処するのは簡単です。
人間からバイアス自体をなくすことはできませんが、心理学的な知識を学んで武器を手に入れることで、人生での後悔は格段に減ります。
【まとめ】
今回の記事のまとめは、以下のとおり。
- 自己正当化バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を無視し、自分を正当化する人間の認識の欠陥のこと。
- 自分を守るために、自分は間違っていないと思い込むことで自己正当化がおこなわれる。
- 自己正当化は思い込みと自信過剰をもたらす。
- 自己正当化バイアスにかからないためには、自己否定や他人の意見に耳を傾ける必要がある。
- 心理学的な知識を学ぶこと、バイアスを事前に防ぐことができる。
自己正当化バイアスは、誰もがかかる可能性がある心理的な現象です。
自分は自己正当化なんてしていないと思っていても、第三者から見ると自己正当化に見えることもあります。
自己正当化バイアスを防ぐには、自分の意見を自己否定し、他人の意見に耳を傾けなければなりません。
人は自分の欠点よりも他人の欠点がよく見えるので、他人の意見には金言がたくさん含まれています。
自分に都合のいい情報ではなく、あえて自己否定する情報のほうを意識すれば、自己正当化バイアスにかかることも減るはずです。
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