【損失回避性とは】人には本能的に損失を回避する傾向が備わっている。

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最終更新日 2024年12月9日

こんにちは、竜崎(@ddd__web)です。

人はは本能的に損失を回避する傾向が備わっています。

たとえば、

  • 挑戦したいことがあるけど、失敗が怖いからやらない。
  • 確率的には勝つほうが高いけど、負けるのが嫌だからやらない。

こうした考えは、心理学的に「損失回避性」と呼ばれています。

損失回避性とは、文字どおり、損失を被る可能性がある出来事を回避する心理傾向のことです。

損失回避性では、人は得な出来事よりも損な出来事のほうを強く認識すると言われています。

  • 嬉しい出来事があったとしても、その後に嫌な出来事があると、後には嫌な感情だけが残る。
  • 一方嫌な出来事が先にあった場合、後に嬉しい出来事があったとしても素直に喜べず、嫌な感情が心に残る。

人は損失や痛みの感情を、喜びや嬉しさよりも強く感じるため、本能的に損失へつながることを避けたがるのです。

今回の記事では、この損失回避性について詳しく解説していきます。

損失回避性について理解すれば、今よりも合理的な行動をとることができ、さまざまな場面で失敗を少なくできるでしょう。

 

損失回避性とは

はじめにも述べたとおり、損失回避性とは「損をする可能性がある出来事を避けたがる心理傾向」のことです。

損失回避性

損をする可能性がある出来事を避けたがる心理傾向。

この損失回避性という概念は、人が不合理な行動をする際の心理を明らかにしてくれます。

そして、損失回避性は「プロスペクト理論」という心理モデルと密接に関連しており、損失回避性について理解するにはプロスペクト理論について知るのが一番です。

そこでまずは、損失回避性とプロスペクト理論について解説していきます。

 

プロスペクト理論

まずはじめに、プロスペクト理論とはダニエル・カーネマンが「ファスト&スロー」という本で提唱した、人間の心理モデルのことです。

上の図は、「人間には利益よりも損失のほうを強く感じる心理がある」ということを表しています。

プロスペクト理論

人は利益よりも損失のほうを強く感じるという心理モデル。

直観的には、嬉しい出来事があれば楽しく生きられると思いがちですが、実際には嫌な出来事が1つあるだけで感情的にはマイナスになってしまいます。

たとえば、以下のような状況を考えてみましょう。

お金持ちの友人から世界中に豪邸を貰い、ポルシェやフェラーリといった高級車をプレゼントされ、口座に10億円振り込まれたとします。

それまで平凡な生活を送っていたあなたは、なんでも好きなことができる自由と時間を手に入れ、喜びと幸せに満ち溢れるでしょう。

しかし、それを次の日にすべて没収されるとします。

状況としてはすべてを手にする前と同じ状態に戻っただけですが、ほとんどの人は以前よりもみじめで不幸な気持ちになるでしょう。

欲しいものを手に入れたときの喜びよりも、失ったときの悲しみのほうが2倍強く感じる。

これがプロスペクト理論が意味していることです。

 

損失回避性の例

プロスペクト理論を頭に入れた上で、損失回避性を言い換えると次のようになります。

不確実で大きな利益よりも 、安定した目先の利益を好む心理的傾向のこと。

損失回避性を具体的な例から考えてみましょう。

友人からコインの表と裏を選ぶゲームに誘われたとします。

コインの表と裏が出る確率は互いに50%。

友人はあなたに「表が出れば100万円、裏が出れば0円、ゲームに参加しなければ20万円あげる」と言います。

さて、どの選択肢を選ぶのが正解でしょうか?

このゲームでは、大多数の人たちがゲームに参加せず、絶対確実に20万円をもらえる選択肢を選びます。

ですが、実際には参加したときのほうが期待値が高く、絶対確実に20万円もらうよりも、50%の確率で100万円を狙うほうが得なのです。

人の頭は直観的に確率を理解できないため、きちんと計算すれば有利な確率だとしても、自分に不利な状態だと勘違いしてしまいます。

不確実で大きな利益よりも、安定した目先の利益。

これが損失回避性という概念です。

 

埋没費用(サンクコスト)

人は利益よりも損失のほうが強く感じ、そのせいで不確実な利益よりも目先の利益に飛びつきます。

たとえ確率的に自分に有利な状態で提示されたとしても、目先の利益を求める欲求に抗うのは難しいのです。

さらに、プロスペクト理論と損失回避性という概念は、心理学用語である「埋没費用(サンクコスト)」にも関係があります。

埋没費用とは、何かに時間やお金を費やした後、途中で行動をやめたとしても回収できない費用のことです。

埋没費用(サンクコスト)

費やした時間やお金を後から回収できず、コストとして失ってしまうこと。

たとえば、毎日10㎞のランニングを5年間続けている人は、ランニングをはじめて半年の人よりも挫折する可能性は低いでしょう。

なぜなら、走るのをやめてしまうと今まで5年間走り続けたことが無意味になってしまうからです。

同じことが事業やビジネスにも言えます。

何かしらの事業に資金を投資したとして、その後でどれだけ成功の確率が低くなっても、投資したお金は戻ってこないために意味なく事業を継続してしまう。

埋没費用を損切できない心理は、損失回避性で説明できます。

つまり、人は損失を強く感じるため、損失を回避するために埋没費用をそのままにしておくことを選ぶということです。

 

損失回避性は人をリスク回避的にさせる

ここまでは、損失回避性とプロスペクト理論について解説してきました。

人は損失のほうが利益よりも2倍強く感じる心理的側面があるため、つい目先の利益に飛びついてしまいます。

たとえ大きな利益を狙うのが合理的な判断だとしても、安定した絶対確実に手にできる目先の利益を求めてしまう。

ですが、それは人生や仕事、その他さまざまな事柄での不合理な行動につながってしまいます。

ここからは、損失回避性が日常生活にどのように表れているのかを詳しく見ていきましょう。

 

損失を回避するのは安定した生活のため

損失回避性からわかるとおり、人は誰しも損をしたくないと思っています。

何か行動したとしても、その行動に損をするリスクがあるとわかった途端、消極的になってしまうのが人間です。

  • たとえ成功の確率が80%あったとしても、20%の失敗のことばかり考えてしまう。
  • 損をするぐらいなら、多少利益が少なくなるとしても、絶対確実な選択肢を選んでしまう。

損失回避性自体は悪いものではなくても、ほとんどの人は安定した生活を送りたいがために、過剰にリスク回避的になっています。

ですが、人生の選択や決断において、過剰にリスクを回避するのは良くありません。

過剰にリスク回避的になってしまうと、やりたいことがあっても挑戦できず、刺激も変化もない人生になってしまいます。

多くの人は「安定した生活を送りたい」と思っていますが、それこそ損失回避性に基づいた意思決定をしている証です。

そしてそれは、プロスペクト理論や損失回避性を知らなくても、人は直感的に「楽しい人生」よりも「つらい人生」のほうが心に残ることを理解しているからでもあります。

 

人は本能的に安定と確実性を求めている

何度も言うように、人はとにかく「今すぐ」「安定」した「確実」な利益を求めます。

一か八か挑戦して人生を大きく変えることにチャレンジするよりも、平凡で安定した生活を送ることができればそれで満足なのです。

だからこそ、現代人は失敗を恥ずかしがり、新しいことに挑戦するのを躊躇い、行動せずにお金持ちなる方法ばかりを探してしまいます。

費やす時間と努力が報われるかどうかハッキリしないとき、心の中で損失回避性が働き、行動せずに現状維持を望む。

さらに時間を費やして努力をした場合でさえ、今までの時間を無駄な損失にしたくないため、埋没費用を受け入れられない。

これらは勉強やダイエット、筋トレや英語学習、起業や転職に踏み出せない心理まで説明してくれます。

人は本能的に安定した生活と確実性を求める生き物なのです。

ですが、安定や確実性といったものはすべて幻想にすぎません。

たとえ今の生活が安定していると思っていても、実際には安定なんていないことがほとんどです。

 

「損失を回避する=安定」ではない

会社員でも自営業者でも、社会の中では安定なんてどこにもないのが現実です。

自分が安定した生活を送っている思っていても、その安定した生活が失われるリスクはゼロではありません。

逆説的ではありますが、安定した生活を実現するには、リスクを取っていくつもの安定を積み重ねるしかないのです。

損失回避性の心理のまま従っていると、何かに挑戦したりリスクを取ったりすることがなくなります。

本当の損失とは、リスク回避的になりすぎることです。

損失回避性の概念を理解しつつ、致命的な損失だけを回避しながら、適度にリスクを取って行動していく。

安定した生活を送りたいと思うのは人間の本能ですが、「損失を回避する=安定」ではありません。

行動するときは、本当の損失は何なのかをしっかり考えるようにしましょう。

 

まとめ:損失回避性による本当の損失は、リスク回避的になること

今回の記事では、損失回避性について詳しく解説してきました。

まとめは以下のとおり。

今回の記事でわかったこと
  • 損失回避性とは、損する出来事を回避する心理のこと。
  • プロスペクト理論とは、利益よりも損失のほうを強く感じることを表す心理モデル。
  • 人は得よりも損の感情のほうが2倍強く感じる。
  • 人が安定を望むのは、損失回避性の心理が働いているから。
  • 「損失の回避=安定」ではない。
  • 本当の損失はリスク回避的になること。

損失回避性は、人間の行動心理を明確に説明してくれます。

人が安定した生活を送りたいと思う心理や、後の利益よりも目先の利益を優先させるのも損失回避性で説明できるでしょう。

合理的に考えれば挑戦したほうがいいことも、損失回避性の心理が働くことで現状維持を好んでしまう。

大規模なテロが起きたとき外国に行くのを躊躇ったり、飛行機の墜落ニュースを見た後は飛行機に乗るのが怖くなるのは、「絶対確実」を求める心理傾向があるからです。

ほかにも、ビジネスや恋愛、経済や金融業界など、日常生活に潜む不合理な行動に損失回避性の影が見られます。

安定した生活を送りたいと思うのも大事ですが、安定した生活を送るにはある程度のリスクを受け入れる必要があることも覚えておきましょう。

人生における当の損失とは、リスク回避的になりすぎることなのです。

また、損失回避性やプロスペクト理論についてさらに詳しく知りたい人は、以下の本を読んでみてください。

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