最終更新日 2025年6月25日
こうした経験をしたことはありませんか?
- 「一度うまくできたことを、もう一度やろうとしたけど失敗した」
- 「他人の実力を勘違いし、後で失望した」
これは統計学用語で「平均への回帰」と呼ばれ、日常生活の中に溢れています。
平均への回帰とは、一度目に偶然よい(または悪い)結果が出ても、二度目以降は平均に近づくという統計的現象です。
今回の記事では、平均への回帰をわかりやすい例で解説していきます。
目次
平均への回帰とは
平均への回帰は、チャールズ・ダーウィンの従兄弟であるフランシス・ゴルトンによって提唱されたものです。
ゴルトンは子どもと親の身長の関係性に調べているときに、偶然平均への回帰という現象を発見したと言われています。
平均への回帰の概要は、以下のとおり。
平均への回帰とは、1回目の試験結果が偏っていた対象について2回目の試験結果を調べると、その平均値は1回目の測定値よりも1回目全体の平均値に近くなるという統計学的現象をいう。
つまり、一回目の結果が平均よりも良かった場合、その結果は偶然によるものであると考え、二回目の結果には偶然がおこらず平均値に落ちつくという現象のことを言います。
一般的には、平均への回帰は統計学などのデータに対して応用するものです。
結果が偶然によるものなのか、それとも因果関係によるものなのかを判断するには、長い時間軸の中で大量のデータを分析する必要があります。
結果に再現性がなければ、その結果は運によるものと考える。
かなり簡単に言えば、平均への回帰とはこういうことです。
平均から乖離した出来事が運ではなく実力であれば、平均への回帰はおこらず、ずっと乖離した結果が出続ける。
平均への回帰は統計学でよく使われますが、この記事では日常生活から平均への回帰の例を見ていきます。
日常生活における平均への回帰の具体例
さきほど言ったとおり、平均への回帰は、平均とは違う結果が起こったときにその結果は偶然であると考え、次の結果は平均値に戻る、つまり回帰する現象のことです。
ここからは、平均への回帰を日常生活の例から見ていきます。
平均的な生活
ある一日の日常生活を見ても、毎日なにかしらの予想外の出来事がたくさん起こっています。
自分が送っている生活は毎日同じことの繰り返しのように見えて、細部まで目を凝らしてみると一日足りとも同じ日はありません。
朝起きて通勤し、仕事をこなして帰宅する。かなり単純化してしまえば、普通の一般人の日常生活はそうしたものです。
こうした同じような日常のことを、ここでは「平均的な生活」と定義します。
「朝起きる⇒通勤する⇒仕事をする⇒帰宅する⇒眠る」
休日は仕事がないので自分の好きなように過ごせますが、その限られた休日もよくよく考えてみれば、いつも似たような休日になっていることが多いはずです。
日常生活は基本的には同じようなことの繰り返しであり、人生も同じような生活の繰り返しを繰り返して成り立っています。
「平均的な日」と「平均とは違う日」
日常生活を単純化すると、毎日同じことを繰り返すだけのものですが、実際には一日たりとも同じ日を過ごしていることはありません。
いつもは朝ギリギリまで寝ていたとしても、いつもより早く目が覚める日もある。
いつもは仕事が終わらなくて残業していたとしても、今日は早く仕事が終わりたくさん余暇の時間があるかもしれない。
同じような毎日でもまったく同じ日というのは存在しなく、細部に必ずどこかしらの違いがあるはずです。
これを平均への回帰の観点からわかりやすく言うと、以下のようになります。
いつもギリギリまで寝ている(平均)⇒ある日は早く目覚める(平均とは違う出来事)⇒次の日はいつもどおりギリギリまで寝ている(平均への回帰)
もちろん、これはあくまで一例であり、日常生活の中にはたくさんの平均への回帰があります。
自分の日常生活を振り返ってみても、いくつか平均とは違う出来事が起こった日を思い出せるはずです。

でも、それは一時的な乖離に過ぎず、乖離は時間とともになくなっていく。
それが平均への回帰というものです。
平均に回帰する前には平均とは違う出来事がある
平均への回帰とは、いつもとは違う結果が起こったときに、平均とは違う出来事から再び平均へと戻る現象のことを指しています。
さきほどの日常生活の例でいうと、「ある日たまたま早く起きた日」が平均とは違う出来事であり、「いつもどおりギリギリまで寝ている」というのが平均的な日です。
平均への回帰が起こる前には必ず平均とは違う出来事が起こり、その次はかなり高確率で平均値に戻ることになる。
これは仕事や生活、人生で成功した人なんかにも応用することができます。
つまり、仕事で成功した、結果を出せた、上司から褒められたというのは、平均とは違う出来事が起きたときの状態です。
しかし、多くの人は平均とは違う出来事が起こったときに、その出来事が起こったのは自分の実力と勘違いしてしまいます。

同じことを何度もやっていれば、そのうち偶然いい結果が出ることもあります。
日常生活は、自分が思っているよりも偶然(平均からの乖離)に支配されているのです。
運を実力と勘違いする平均への回帰
世の中には自分の実力で成功する人もいますが、多くの人の成功は運とタイミングがほとんどと言われています。
しかし、成功した本人は自分の実力によって結果を出したと思い込んでしまう。
たとえば、
100mのタイムがいつもより1秒早くて代表選手に選ばれた。
でも、そのタイムは単なる平均とは違う出来事の偶然であり、代表選手として走ったときのタイムは平均への回帰により1秒遅くなった。
ということがよくあります。
これは成功した人や結果を出してる人を否定しているわけではなく、「その成功や結果には運が大きく関係しているかもしれない」ということです。
SNSでバズった人や、インフルエンサーと呼ばれる人たちにも同じことが言えるかもしれません。

ですが、実際には成功は運と偶然の力が大きいので、その後に続く投稿や動画が同じく注目されることはありません。
そうして、インフルエンサーの多くは時間とともにメッキが剥がれていきます。
平均への回帰に騙されないための思考法
ここまでは、日常生活の中に潜む平均への回帰について解説してきました。
平均への回帰は本質とは間違った結果に結びつくため、注意しておかなければなりません。
ここからは、平均への回帰に騙されない方法を解説していきます。
再現性があるか確かめる
いつもとは違う出来事や結果を自分の実力だと思い込んでしまうと、人生の大きな決断を間違ってしまうかもしれません。
副業が偶然うまくいっているだけなのに本業の仕事をやめたりすれば、平均への回帰が起こったときにうまくいかなくなり、仕事や生活に困ってしまいます。
もちろん、本当に実力がないと成功できないジャンルの仕事もあります。
料理人はたまにしかおいしい料理を作れないのであれば、お店が繁盛することはない。
美容室にしても、いつもガタガタにしか髪を切れず、たまにしかうまく髪が切れないお店が人気店になることはない。
歯医者や車のエンジニア、プログラマーや外科医といった職業の人たちに、運や偶然が仕事の成功に影響することはない。
こういった職業では、常に一定の結果を出し続けないと評価されないため、平均への回帰とは無縁の職業です。
平均への回帰に騙されないコツは、その結果に再現性があるかどうかです。
毎回同じ結果を再現できるようであれば、その結果には平均への回帰は働きません。
一方、何度も同じ結果が得られない場合は、ほぼ確実に平均への回帰の力が働きます。
謙虚に考え、期待しない
一定期間うまくいっているだけで、自分の実力だと思い込むのは危険です。
そうした時期に、人生の中で重大な決断を下してしまうと痛い目を見てしまいます。
平均とは違う出来事が起これば、ほぼ確実に平均への回帰も起こる。
一時的に注目されていた人は、平均へと回帰したときにメッキが剥がれ、平凡な自分へと逆戻りです。
平均への回帰のタチが悪いのは、平均とは違う結果を出したときに注目が集まる点にあります。
うれしい結果が出たときに周りから褒められれば、誰だって調子に乗ってしまうもの。
しかし、それが平均への回帰に騙されることにつながります。

平均から乖離した結果を喜んでも、最終的には平均への回帰の力によってガッカリしていまいます。
謙虚に考えるというのは「期待しない」とも言い換えることができ、期待しない生き方で平均への回帰に騙される確率も低くなるのでおすすめです。
期待しない生き方については、以下の記事で詳しく解説しているので、興味がある人は読んでみてください。
本当の自分の実力を把握する
人は目立ったものや、普通とは違う出来事に注目してしまう生き物です。
人間の脳はそのようにできているからこそ、人類は現代まで生き延びてこれました。
ですが、その特性は、運や偶然が大きく影響する現代の社会にはあまり適していません。

しかし、人生での失敗や後悔を減らすためには、常に自分の本当の実力を把握しておく必要があります。
そして、平均への回帰を頭に入れておけば、予想外の出来事が起こったときにも謙虚でいることができます。
- その結果は、偶然やタイミングの要素が強く働いていないかどうか
- 以前一度だけうまくいっただけなのに、自分の実力だと思っていないかどうか
調子に乗りそうなときは、上記の質問を自分に投げかけてみましょう。
自分の本当の実力を把握していれば、平均への回帰に騙されることもなくなるはずです。
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まとめ:平均への回帰を理解することの重要性
平均への回帰は、平均と違う出来事が起きた後に平均値へ戻る性質のことです。
うまくいったことがあったとしても、そこに再現性がなければ自分の実力だとは言えません。
平均への回帰に騙されると、間違った決断を下してしまう可能性があります。
平均への回帰を頭に入れておくことで、物事の本質を見極め、運と実力をハッキリ判別できるようになるでしょう。