アドラー心理学の「目的論」とは?原因論との違いと日常での活かし方

アドラー 目的論
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最終更新日 2025年6月24日

近年、心理学といえば「アドラー心理学」が注目されることが多いです。

アドラー心理学は、オーストラリア出身の心理学者「アルフレッド・アドラー」の心理学であり、今では「個人心理学」として知られています。

アドラーは心理学者としてはフロイトとユングに並び三大巨匠として知られ、「嫌われる勇気」という本で一般的にもアドラー心理学が大きく知れ渡りました。

アドラーは、「人間のすべての悩みは人間関係にある」と述べています。

そして、アドラー心理学の中でもとくに重要な概念が「目的論」という考え方です。

この記事では、アドラーの目的論について詳しく解説していきます。

心理学に興味がある人とは、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

アドラーの目的論とは何か?

アドラーの目的論は、人の行動のすべてには目的が存在するという考え方のことです。

たとえば、誰しも一度は感情に振り回されたことがあるでしょう。

竜崎
怒るほどでもないのに怒ってしまったり、大したことでもないのに悲しんでしまったり、気にしなくていいことまでも気にしてしまったりなど。

自分で自分の感情や気持ちをコントロールできなくなってしまうことは多いです。

ですが、アドラーは感情は誰でもコントロールすることができ、人間は決して感情の奴隷ではない」と述べます。

 

人間の行動にはすべて目的がある

アドラーの目的論では、人間がある感情を抱く背景には必ず「何かしらの目的」があると考え、日常的にとる行動のすべては目的に沿っておこなわれていると考えます。

怒るほどのことでもないのに怒ってしまうのは、怒ることで果たしたい何かしらの目的があるために、「怒り」という感情を使っていると考えるのです。

ほかにも、引きこもりは「外に出るのが怖いから引きこもっている」と考えるのではなく、「引きこもることで注目されたい」「親から心配されたい」という目的を持って引きこもっていると考えます。

目的論的な考え方
  • 怒るのは怒る原因があるからではなく、他人を屈服させたいという目的がある。
  • 引きこもりは外に出るのが怖いからではなく、引きこもることで注目されたいという目的がある。

人間の行動はすべて目的に沿っておこなわれており、行動や感情の裏にある目的について考えることが、自分や他人を知るために重要だとアドラーは述べています。

アドラーの目的論

✅人間行動の目的を理解する。

✅すべての人間行動には目的がある。

✅行動の目的は未来にある。

✅人間行動は未来に向けての創造的な活動といえる。

✅人間には選択と決断の自由がある。

 

怒りや悲しみの感情は目的のために使っている

現代ではアドラーの目的論的な考え方が、人間の心理にもっとも近いと言われています。

それはつまり、自分の行動や感情について理解したいのであれば、自分が「何を目的としているのか」を考えることが大事ということです。

アドラーの目的論的な考え方は、日常生活にも応用できます。

✅何か行動をしようとしているときは、その行動に潜む本当の目的を考えてみる。

✅怒りや悲しみなどの感情が湧いてきたときは、その感情の裏に潜む目的を探してみる。

とくに、怒りの感情は何か嫌なことがあったというよりも、自分の目的を達成するために怒りの感情を使っているケースが多いです。

怒りの感情は「相手を自分に従わせたい」という目的から沸いているのかもしれない、悲しい感情は「同情されたい」という目的から沸いてくる感情かもしれません。

竜崎
感情や行動の目的は本人にしかわかりませんが、目的論的な視点から自分の心理と向き合うことで感情をコントロールできるようになります。

自分の行動や感情の裏に隠れている目的について考えることで、感情に振り回されず、冷静に物事を対処できるようになるはずです。

 

目的論と原因論の違い|アドラーとフロイトの比較

アドラーに対する心理学として、「フロイト心理学」も現代では根強い人気があります。

フロイト心理学は、人間の行動はすべて無意識の領域でおこなわれていると考える「無意識論」の心理学です。

つまり、アドラーとは真逆の心理学となります。

✅アドラー心理学⇒人間のすべての悩みは人間関係にあるとする「個人心理学」

✅フロイト心理学⇒人間の行動はすべて無意識の領域でおこなわれている「無意識論」

現代ではアドラー心理学の考えを「目的論」、フロイト心理学の考えを「原因論」と呼び、両者の心理学はよく比較されています。

ここからは、アドラーの目的論とフロイトの原因論の違いを詳しく見ていきましょう。

 

原因論の考え方とは?

目的論は、目的に対しての手段として、人間が行動や感情を利用すると考えます。

それに対し、フロイトの原因論は、人間の行動や感情はすべて「何かしらの原因」があってこそ生じると考えます。

「怒るほどでもないのに怒ってしまう」という行動は、フロイトの原因論から言うと怒る原因があるからこそ怒るということです。

「人間は目的を持って行動したり感情を使っているのではなく、何かしらの原因があるからこそ行動し、感情が沸いてくる」と、フロイトは述べています。

つまり、フロイトは「原因」がなければ、人間は行動を起こさないと言っているのです。

ですが、アドラーは、原因によって行動するのは後ろ向きな生き方であると言い、人は目的によって未来に進んでいくと言っています。

このように、アドラーの目的論とフロイトの原因論には大きな溝があり、両者が対立するのも無理はありません。

 

人は「原因⇒結果」の因果関係を探す

多くの人は、アドラーの目的論よりも、フロイトの原因論のほうがわかりやすく頭にも入りやすいと思います。

原因論的な考え方

✅嫌なことをされたから怒る。

✅悲しいことがあったら泣く。

✅嫌な仕事をしているからつらい。

これらはすべて、原因論的な考え方です。

物事の因果関係を考えるときにも、人は「原因⇒結果」という方向性で物事を考えます。

これは、人間には「物事の原因を考えてしまう癖」があることを示しています。

フロイトの原因論

✅人間行動の原因を理解する。

✅すべての人間行動には原因がある。

✅行動の原因は過去にある。

✅人間行動は衝動への受動的な反応である。

✅人間は本能や環境の犠牲者である。

 

目的論と原因論はどちらが正しい?

アドラーの目的論と、フロイトの原因論の違いは明確です。

✅怒りの感情は、怒りによって達成したい「目的」があると考える目的論。

✅怒りの感情は、何かしらの「原因」があったからこそ沸いてくると考える原因論。

では、人は目的と原因のどっちに突き動かされているのか。

結論から言うと、目的と原因の両方です。

自分の行動を考えてもわかるように、何か行動するときに目的を持っている人がほとんどです。

街中へ行くのは新しい服が欲しいからかもしれないし、友達と待ち合わせしているからかもしれない。

あるいは、目的を見つけることが目的になっているかもしれない。

ですが、これはフロイトの原因論でも説明できます。

街中に行くのは、仕事で嫌なことがあってストレスを発散したいからかもしれないし、恋人と喧嘩したからかもしれない。

あるいは、原因がないことが原因となっているかもしれない。

こう考えると、「目的論と原因論のどちらが正しいのか」という問い自体が、意味のないものというのがわかります。

人の行動や感情は、目的によって突き動かされていることもあり、ハッキリとした原因があって突き動かされていることもあるのです。

 

目的論も原因論も使い方次第

現代ではアドラーの目的論のほうが、フロイトの原因論よりも注目されています。

ですが、両者の違いを考えるときに大事なのは、そもそも心理学には正解や間違いというものはないということ。

人間の心理は複雑で、絶対的に正しい「心理」なんてものはありません。

竜崎
アドラーの目的論もフロイトの原因論も、人間の行動や感情、心理について探求している心理学です。

実際、フロイト心理学は20世紀でもっとも大きな力を持った心理学として現代まで語り継がれています。

そして、心理学者の中には、アドラー心理学のほうが間違っていると述べている人もいます。

心理学は万人に通用する普遍的な人間心理を探求する学問ではなく、悩んでいる人や悲しんでいる人、傷ついている人やつらい人たちに寄り添う学問です。

心理学を患者のためになるように使えば正解になり、患者を苦しめる使い方をすれば間違いになる。

心理学には、あくまでも状況に適した心理学があるだけなのです。

 

アドラーの目的論を日常に活かす方法

アドラーの目的論は、うまく使えば人間関係の改善や、感情のコントロールに役立つ考え方です。

ここからは、アドラーの目的論を日常に活かす方法を、簡単に紹介していきます。

 

自分の感情を目的から考える

アドラーの目的論では、すべての感情や行動には「何かしらの目的」があるとされています。

たとえば、「なんとなく落ち込む」「ついイライラする」といった感情も、単なる反応ではなく、無意識に自分が達成しようとしている目的のために生まれているのです。

悲しいと感じるのは「誰かに慰めてほしい」「理解されたい」という思いからかもしれなし。

イライラするのは「自分の意見を通したい」「相手をコントロールしたい」といった目的が隠れているかもしれない。

このように、感情を「目的の視点」から捉えることで、自分の内面に潜む本当の欲求に気づくことができます。

そしてその気づきが、感情との付き合い方を変え、ストレスを減らし、対人関係をスムーズにしてくれるのです。

アドラーが「人間のすべての悩みは人間関係にある」と言っているように、目的論は人間関係の改善に役立つ考え方となります。

 

怒りをコントロールする方法

怒りという感情はとてもエネルギーの強いものですが、アドラー心理学ではその怒りですら「自分の目的のために選択して使っている感情」として捉えます。

つまり、怒ってしまうのは「感情が勝手に湧いてきた」のではなく、「相手を屈服させたい」「優位に立ちたい」といった目的が背景にあるというわけです。

竜崎
怒りをコントロールするためには、まず「なぜ自分は怒っているのか?」という原因を探すのではなく、「怒ることで何を得たいのか?」という目的を考えてみること。

そして、その目的が本当に自分の望むものかどうかを一度冷静に考えることが大切です。

おすすめなのは、「深呼吸して10秒だけ黙る」「紙に感情と理由を書き出す」といった行動。

これだけでも、感情の暴走を防ぎ、理性的な判断ができるようになります。

アドラーの目的論を応用すれば、怒りに振り回される人生から抜け出し、自分の感情に責任を持つ主体的な生き方へと変わることができるのです。

 

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まとめ

現代ではアドラーもフロイトも、心理学者の巨匠として知られています。

アドラーの目的論は人間行動の目的を理解する心理学であるのに対し、フロイトの原因論は人間行動の原因を理解する心理学です。

目的論と原因論は対立するものに思えますが、どちらが正しいのかという問いはあまり意味がありません。

竜崎
現代ではアドラー心理学の目的論の考え方のほうが有利な立ち位置にありますが、フロイトの原因論も自分と向き合うときに役立ちます。

目的論と原因論の違いを考えるときは、「どちらが正しいか」ではなくそれぞれが役立つ場面を考えてみましょう。

また、アドラー心理学については、以下の記事でも解説しているので、興味がある人は読んでみてください。

【性格を変えたい人へ】アドラー心理学から学ぶ性格を変える方法を解説。

2023年7月18日

アドラーの目的論、フロイトの原因論についてもっと詳しく知りたい人は、以下の本も読んでみてください。

■参考書籍

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