最終更新日 2024年12月20日
アドラー心理学の創始者であるアルフレッド・アドラーは、人生の人間関係の問題を「交友のタスク」と名づけました。
アドラーは幸せに生きるためには「仕事のタスク」「交友のタスク」「愛のタスク」という3つの「人生のタスク」をクリアしなければならないと言っています。
交友のタスクは人間関係の問題のことであり、友情や愛情、仕事上の対人関係など広い分野にまたがる人間関係全般のことです。

「友達は宝」「愛する人がいるから頑張れる」というように、良質な人間関係こそ人生の充実に不可欠だと思っている人はたくさんいるでしょう。
アドラーが交友のタスクと称して人間関係の悩みを扱っていることからもわかるとおり、人は生きている限り人間関係の問題から逃れることはできません。
ですが、それは「人間関係が必ずしも必要」という意味ではありません。
人間関係が大事だと言われるほど、うまく人付き合いができない人、友達や恋人がいない人、人と話すのが苦手な人は、自分の人間関係の希薄さを欠点だと考えるようになってしまう。
今回の記事では、人間関係はいらないのかどうかを解説していきます。
人間関係はいらないと思っている人、人間関係に悩みがある人は、最後まで読んでみてください。
目次
人間関係にはいらないものもある
はじめにも言ったように、人は生きている限り人間関係の問題から逃れられませんが、それは「人間関係が必ずしも必要」という意味ではありません。
実際、「人間関係が大事」という言葉によって生きづらさを感じている人もいます。

つまり、人間関係にはいらないものもある、ということです。
人間関係は狭く深くが最強
実際、人間関係がいらないと思っている人でも、本心では他人と楽しく生きられたらいいなと思っている人は多いです。

人はみんな社会的な動物なので、「人とのつながり」によって幸せを感じる部分もたしかに存在しているのです。
そこでおすすめなのが「狭く深い人間関係」というもの。
たとえば、家族や恋人、本当に心の底から信頼できる友達との関係性など、人数は少ないけれど心を許せる人との関係性、それが狭く深い人間関係です。

どんなに人間関係がいらないという人でも、社会の中で生きていく以上、最低限の人間関係は必要です。
頼れる人、信頼できる人、支えてくれる人、大切だと思う人。そうした人がいない人生は味気ありません。
すべての人間関係をいらないと切り捨てるのではなく、助けが必要なときに頼ることができる人間関係は最低限持っておきましょう。
共同体感覚を持つ
人間関係がいらないと思っている人の中には、どうしても「狭く深い人間関係」も作れないという人もいます。
ですが、たとえ人間関係を作ることができなくても「共同体感覚」を持っていれば十分です。
共同体感覚とは、アドラー心理学で使われている言葉であり、簡単に言うと「家族や職場、社会などの共同体の中で他人とつながっている」と感じる感覚のことを言います。

たとえどれだけ一人が好きでも、どれだけ人間関係に嫌気が差していたとしても、人は誰しも社会の中で生きている存在です。
「自分も社会の一員だ」という感覚がなくなると自分のことしか考えなくなり、人生がつまらなく感じてしまいます。
共同体感覚は、他人を仲間と見なし、仲間や社会のために貢献しようと思う意思を持ち、社会の中に自分の居場所があると実感することで生まれます。

- 他人や社会に貢献しようと思う意思。
- 他人はみんな仲間だと思う感覚。
- 社会の中に自分の居場所があると感じる感覚。
人間関係も共同体感覚もない状態では、自分は何のために生きているのかがわからなくなりがちです。
「自分の居場所がない」と感じるのは、人間関係がないからではなく共同体感覚が欠如していることによります。

たとえ人間関係はいらないと思っていたとしても、社会の中で生きている以上、社会全体に対して興味は不可欠です。
そこから得られる共同体感覚が、人間関係の代わりとなってくれます。
狭く深い人間関係か共同体感覚か
友達や恋人がいなくても、家族や親族など狭く深い人間関係を持っていれば楽しい人生を送れる。
そして、狭い人間関係すらないという場合でも、社会への興味を持ち、共同体感覚を養うことで充実した人生を生きられる。
共同体感覚を得るために必要なのは「他者貢献」であり、自分なりの方法で他人に貢献することで社会の中で自分の居場所を感じることができます。

社会の中で自分の居場所を感じることができれば、自己肯定感も高まり、ありのままの自分を認めることができるようになる。
共同体感覚は、人間関係がいらないと思っている人、友達や恋人がいない人が社会の中で孤独にならずに生きていくために必要なものです。
人間関係も共同体感覚もないと本当の意味で一人ぼっちになってしまい、孤独に心が押しつぶされてしまいます。

少なくとも、孤独に押しつぶされたくない人は、狭く深い最低限の人間関係か共同体感覚のどちらかを持つことがおすすめです。
本当に人間関係がゼロで、他人や社会にも一切興味がない状態で楽しく生きていける人は、ほとんどいません。
人間関係がいらない場合でも、人間関係に代わる心の支えとなるものが不可欠です。
いらない人間関係を見極めるポイント
人間関係の中には、いらない人間関係があるのも事実。
人間関係はなんでもかんでも大事にするものではなく、自分にとって大事な人間関係だけ大事していればいいのです。

ここからは、いらない人間関係を見極めるポイントを紹介していきます。
- 損得勘定で付き合っていないか
- ストレスが伴っていないか
- 「暇だから」「寂しいから」で付き合っていないか
損得勘定で付き合っていないか
いらない人間関係として真っ先に断捨離すべきなのは、損得勘定で付き合っている人間関係です。
あの人と一緒にいればいいことがある、この人はご飯をおごってくれたり、プレゼントで何か買ってくれるから付き合っている、といった関係が損得勘定での人間関係となります。
ほかにも、仕事の人間関係では損得勘定での付き合いが入りやすく、自分にとって得だからいい顔をする、といった関係性も、損得勘定での人間関係です。

一見、損得勘定での付き合いは自分に非がないので良く思えますが、自分が損得勘定で付き合っているということは、相手も損得勘定で付き合っている可能性が高いです。
そのため、相手があなたのことを必要ない、付き合ってもメリットがないと判断すれば、あっという間に関係が切れてしまいます。
また、損得勘定は自分のためなら相手を裏切ることもあるため、損得勘定での付き合いは騙し騙されの関係になることも多く、実際には付き合っていてもメリットがほとんどありません。

「今は自分にとってメリットがあるからこのまま付き合っていてもいいか」と思っていても、そうした打算的な気持ちは相手にも見抜かれやすいです。

逆に、相手からそうした損得勘定の匂いがする場合も、すぐに関係を切ってしまいましょう。
人間関係の本質は「量」ではなく「質」であり、損得勘定の関係性は質が悪く、精神的にもネガティブな影響があります。
損得勘定での関係性に心当たりがある人は、スパッと断捨離し、人間関係を整理しましょう。
ストレスが伴っていないか
人間関係がいらないと言う人たちは、全員が昔からずっとそうだったとは限りません。

ですが、大人になるにつれて少しずつ一人で過ごす時間のほうが好きになっていきました。
このことについては、以下の記事で詳しく解説しているので、興味がある人は読んでみてください。
一人が好きになったのは価値観が変わったことが大きな要因ですが、ほかにも「人間関係のストレス」が大きく関係しています。
子どもと大人では他人との付き合い方は異なり、本音ではなく建前、相手のことではなく自分のこと、一緒にいる時間を損得勘定で考えるようになりがちです。
そうした付き合いは、子どもの頃の純粋な「友達」とは違います。

常に仮面をしながら他人と接しているように感じ、自分の本心を誤魔化しながら、その場を楽しんでいるように愛想笑いを振りまく。
そうした人間関係は、大人にはいらない人間関係です。
人間関係で得られるメリットを、人間関係で感じるストレスが上回っている場合、その人間関係は自分にとって不必要なものと言えます。

人間関係にストレスを感じている人は少なくありませんが、そのストレスがどれだけ精神的に悪影響なのかをわかっている人は少ないです。
1人になりたくない、寂しくなるという思いから、多少ストレスがあっても我慢する人もいますが、仮に人間関係がなくても共同体感覚を持てば孤独にはなりません。
いらない人間関係は捨て去り、その代わりに共同体感覚を持ったほうが人生を楽しく生きられます。

「暇だから」「寂しいから」で付き合っていないか
おそらくほとんどの人は、「暇だからとりあえず会う」「寂しいから遊ぼう」といった人間関係を持っているものです。
とくに学生の頃の人間関係はこうした関係性が多く、暇な時間を埋めるために、思い出を作るために友達付き合いしている人がほとんど。

なぜなら、そうした人間関係を続けていても精神的な成長がなく、1人でいると寂しさを感じる孤独耐性が低い大人になってしまうからです。

精神的に成長するためには1人でいる時間が不可欠であり、「暇だから」と友達と付き合っていては1人では人生を楽しめない人間になってしまいます。
また、暇をつぶすだけの関係性には信頼もなく、どちらかが暇ではなくなると、関係が終わってしまうことも多いです。
つまり、「暇だから」「寂しいから」という関係は条件付きのものであり、ほかに楽しいことや恋人ができればすぐに関係性は切れてしまいます。

何度も言いますが、人間関係は「量」ではなく「質」です。
簡単に終わる人間関係は、はたして質が高いと言えるのか。
暇をつぶすだけの関係、寂しさを埋めるだけの関係は大人にはいらない人間関係です。
惰性で続けている人間関係がある人は、その時間を1人で過ごし、精神的に強くなったほうが今後の人生も生きやすく、楽しいものになります。
まとめ
今回の記事のまとめは、以下のとおり。
- 人間関係にはいらない関係もある。
- 狭く深い人間関係を持っておくのが大事。
- 人間関係はいらなくても、共同体感覚を持つこと。
- 損得勘定で付き合っている人間関係はいらない。
- ストレスを感じる、暇つぶしの人間関係もいらない。
- 狭く深い人間関係か、共同体感覚のどちらかは必要。
人間関係がいらない人の中には、「友達や恋人もいらない」「人間関係はストレスでしかない」と思っている人がたくさんいます。
ですが、人は一人では生きていけず、人間関係をすべて断ち切って生きていくのは不可能に近いです。

狭く深い人間関係は、家族や身内、恋人や本当に心が許せる数少ない友達などです。
共同体感覚は、社会の中に自分の居場所を感じる感覚のことを指します。
人間関係がいらないと思っている人は、狭く深い関係か、共同体感覚のどちらかも持つことを意識してみましょう。